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在宅医療20周年

三育会のがん緩和ケアについて

三育会理事長 英医師によるドクター対談

今年(2015年)6月に三育会にご入職された向山雄人先生。(元がん研究会有明病院緩和治療科部長・緩和ケアセンター長)32年以上、腫瘍内科医、がん緩和ケア内科医として進行・再発がん診療の最前線を歩んで来られた向山先生と、在宅医療・訪問診療のご感想や三育会の向かうべき今後の在宅がん緩和ケアについてお話がはずみました。

訪問診療と大病院の外来。患者さんの印象は?

今日はホームページ用のお話をしていきたいと思います。先生は、ご入職頂いてから…

在宅医療のあり方を学びつつ、あっという間に7ヶ月間が過ぎました。

本当にありがとうございます。我々にとっては診療の幅が広がると同時に、対外的にもいろいろな意味で認知されることが多くなって。7ヶ月間、どうでしたか?

これまで32年間以上、がん専門病院という施設で外来や病棟で細やかに診療をして来たと思っていますが、在宅医療では違った側面からより濃厚な診療が行えると感じています。在宅では患者さんやご家族の苦痛、困られていること、言いたいことなどがストレートに伝わって来ます。訪問診療する度に、患者さんやご家族が大病院の外来などではここまでは外来では話せなかったと言う事をお聞きすることが多々あります。

(患者さんが)外来とは違う表情であると?

そうですね。慌ただしい外来では、患者さん、ご家族は『忙しそうにしているのでこれ以上言っちゃまずいかもしれない、話せない』と遠慮をされていたと思います。ご自宅に伺うと患者さんとご家族はリラックスされています。大病院という施設が持つ威圧感がないので、医師や看護師にいろいろ話しやすいのかもしれません。

病院(施設)では、垣根があった?

そうですね。垣根が低くなることで、病院では気が付かなかった患者さんやご家族のつらさなどをより深く把握することができます。

医師にとって、在宅のデメリット・メリットとは?

在宅は、例えば夜の対応とか、うちのやり方の場合、ある意味一番医者にとってすごく手間がかかるじゃないですか。「眠れない」とか、普通の外来では出てこないであろう話だし、病棟なら看護師さんがケアしてくれることも、ドクターに降りかかってきてしまう。

そういう、デメリットとメリットがあると思うのですが、まぁ、デメリットは“大変なこと”であると思うのですが。メリットは患者さんやご家族が生活の中でどんなことに困っていて、どういう不安があってと言うのが分かることでしょうか。

先生は、休日の対応とか、どうお感じになりますか?

ヒロクリニックでは当直の医師、看護師が私の依頼する診療内容に関して丁寧に対応してくれているのでその点は非常に安心できます。32年間以上がん診療を行ってきますと、こういう病態だったらこのような症状が出ると予測できるので、その診療指示を当直の医師が適切に行って頂ける今のシステムは素晴らしいと思います。

そう言うバックアップはあるかなと思います。

ご入職前と今、イメージされていた緩和ケアは一致してらっしゃいますか?

非常に患者さんが多かったがん専門病院での外来や病棟での診療は、時間的にも余裕が無くどうしても関わりが浅くなっていたかもしれません。患者さん、ご家族とより深く関われたら、多職種とディスカッションしながら診療できればと思っていましたので、今はその点で充実しています。

それを伺って本当に嬉しいです。
先生の評判は素晴らしくて、普通、なかなか施設、特に病院でお立場のある先生が、在宅医療で…尾籠な話ですが、排泄の問題から睡眠の問題から、介護の問題から…いろいろな問題に、きちんと対応してくださっていることは、頭が下がります。

緩和治療・ケア病棟はできる限りプライバシーが守られリラックスできる環境にしていましたが、やはり病院という施設の中で、どうしても様々な制約や患者さん、ご家族にも遠慮があります。その点、在宅医療は患者さん、ご家族の全人的な苦痛(トータルペイン)を深く見ることができる診療の場として大きなメリットがあると思います。

参考資料:がん研有明病院緩和治療病棟 吹き抜けのテラス

自然光が入る

参考資料:がん研有明病院緩和治療病棟 病室

リラックスでき、プライバシーが守られている

参考資料:がん研有明病院緩和治療病棟 家族室

ゆったりと過ごせる

参考資料:がん研有明病院緩和治療病棟 ファミリーキッチン

清潔で調理器具も充実

参考資料:がん研有明病院緩和治療病棟 デイルーム

お茶会などのイベントが出来る

先生にそう言っていただけて、すごく嬉しいですね。

今後、質の高いがん医療を普及させるためにも、在宅医療、訪問診療という領域に多くのがん診療医に関わって頂きたいと願っています。

今年(2015年)6月に新宿ヒロクリニックが新大久保に移転開業し、先生に緩和ケア外来を始めていただいて、また、勉強会でも先生に教えていただいて。

今後のことになりますが、がんの疼痛だけでない、さまざまな病態に対するアプローチなど、在宅医療でどういう風にイメージされていますか?

私としては在宅がん医療の関わりで米国のマサチューセッツ総合病院(MGH)の研究で明らかにされた早期から、診断された時点からの緩和ケアの有効性が再現できないかと考えています。

早期からの緩和治療・ケアの有効性に関する比較臨床試験
進行非小細胞肺がんさんを対象としたマサチューセッツ総合病院(MGH)における比較臨床試験結果

抗がん剤治療+緩和治療・ケア併用群では.....
死亡前2か月間における点滴抗がん剤治療施行患者数が有意に少なかった
緩和ケア病棟入院期間と集中的な症状緩和治療を受けた日数は有意に長かった
QOLは有意に高く、抑うつ・不安は低かった
(OOL評価票, 症状評価票解析結果に基づく)
3か月間の有意な生存期間の延長を認めた

The New England Journal of Medicine 2010;363:733-742
Massachusetts General Hospital(MGH)からの報告

「がん性疼痛」、「がん関連精神症状」、「がん悪液質」という、がん緩和治療・ケアの3重点課題、特に以前から行っていた「がん悪液質」「がん関連炎症」「がんと栄養」に関して在宅医療の側面から取り組んで行きたいと思っています。

世界の緩和医療三重点課題
  1. がん疼痛:WHO方式がん疼痛治療法を軸に、放射線治療、神経ブロック・脊髄鎮痛法、インターベンショナルラジオロジー(IVR)などを併用した集学的治療
  2. がん関連精神症状:支持的精神療法(カウンセリング)、薬物療法
  3. がん悪液質:紀元前4世紀にヒポクラテスが提唱して以来、緩和領域を含めた腫瘍学全体に渡る最大の課題

がん緩和ケアは、手術、放射線治療、抗がん剤治療、免疫治療と並ぶがん医療の柱であり土台であると言えます。たとえ進行・再発がんと診断されても診断時点から緩和ケアが関わることで生活の質(QOL)の向上と延命効果が得られると信じています。

そうですね、そうですね。

ヒロクリニックの各領域のスタッフや地域連携によるチーム医療で早期からの在宅がん緩和ケアを提供することが「高いQOLを維持しながらがんと共存できる医療」が実現すると願って日々頑張っております。

先生がご入職される以前も、(三育会で)がん緩和をやっているつもりでしたけど、“看取り”の部分中心だったなと思いますね。

このMGHのデータをみると、“治療だけやってて最後に看取り”と言うことでなく、我々が目指して行かなくてはいけないのは“うまくがんと付き合って行くこと”のサポートですね。

そうですね。「がん緩和ケア」と重複する部分も多い「がんサポーティブケア(supportive care)」と呼ばれる領域を極めて実践して行くことも重要な課題です。

先生とご一緒にやって行けたらいいなと。

まだ日本では、がん緩和ケアは“看取り”だけの医療だと思われていて、患者さんやご家族も「緩和ケアなんて亡くなる直前、まだ早い」とおっしゃるケースが多いという現状です。

先生のおっしゃっていることを私なりに解釈すると、“がんとうまく付き合う”為のさまざまなサポートですよね。

はい。クリニックで結果を示して分かって頂ければがん緩和ケアに関する誤解を少しでも払拭できるでしょう。

それを行って行くことが三育会の役割ですね。

本気でやるなら、一番タフでアクティブなクリニックで学びたいと思って入所させて頂きました。(笑)

(新しいスタートに三育会を選んだ理由)がん専門病院時代から私の患者さんも大変お世話になっていましたが、非常に丁寧に対応して頂いたので私もぜひ参加できればと願っていました。

(笑)先生はずっとタフな現場を歩んで来られて。

これまでの経験を少しでも活かすことが出来れば幸いと存じます。がん対策推進基本計画(厚生労働省)の目標、課題の多くが、緩和ケア領域ですが現状はまだまだです。

今までの治療だけということでなく。

7ヶ月間、向山先生とご一緒してイメージが出来てきました。早期の緩和って、早く在宅紹介すればいいと言うことではなかったですね。外来診療と訪問診療が双方向性に円滑に行えることが求められています。

(2015年11月12日 新宿ヒロクリニック会議室にて)

がん対策推進基本計画(厚生労働省)

全体目標
  1. がんによる死亡者数の減少
  2. 全てのがん患者とその家族の苦痛の軽減と療養生活の質の維持向上
  3. がんになっても安心して暮らせる社会の構築
重点的に取り組むべき課題
  1. 放射線療法,化学療法,手術療法の更なる充実とこれらを専門的に行う医療従事者の育成
  2. がんと診断された時からの緩和ケアの推進
  3. がん登録の推進
  4. 働く世代や小児へのがん対策の充実

研修にいらっしゃる先生へメッセージ

向山先生と融合することで、三育会として在宅の緩和ケアの、新しいやり方が提示できるのでは、また、その為に努力しなければと思っています。がんの患者さんの、『いい生活があって初めていい人生があって、いい治療がある』と言う、治療だけではない、もっと広げた生活全体のサポートを考えていきたいと思っています。一緒にやってくださる先生がいらしたら、ぜひ。

職員採用ページはこちらです。研修も随時受け入れております。

向山雄人医師 略歴

向山(むかいやま) 雄人(たけと)
医療法人社団 三育会 新宿ヒロクリニック 在宅緩和ケアセンター長

1981年3月 東海大学医学部卒業
1984年11月 米国マサチューセッツ工科大学(MIT) がん研究センターリサーチフェロー
1990年4月 財団法人 癌研究会附属病院 化学療法科医長・癌化学療法センター臨床部医長
1995年4月 東京都立駒込病院 化学療法科医長・緩和医療担当医長
1999年7月 東京都立豊島病院 緩和ケア科・腫瘍内科 医長
2005年3月 公益財団法人 がん研究会有明病院 緩和治療科部長・緩和ケアセンター長
<資格など>
日本緩和医療学会暫定指導医
日本がん治療認定機構暫定教育医
日本緩和医療学会「がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会」学会推薦指導者
日本緩和医療学会「緩和ケアの基本教育に関する指導者研修会」修了者
日本緩和医療学会緩和医療ガイドライン委員会「鎮静ガイドライン」WPG(Working Practitioner)員
東海大学医学部客員教授
その他

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ドクター対談 第1回

ドクター対談

英裕雄医師(三育会理事長・新宿ヒロクリニック院長)×向山雄人医師(在宅緩和ケアセンター長)

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